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りんご

りんごの実が1つ。

 

「私はこんなに赤くてつやつやで、

 炎よりも美しく、まっか。

 肥沃な大地に植えられて、

 お日様の光もちょうどよく浴びて、

 大切に育てられた。

 特別な品種のりんごなの。

 私ほど素敵なりんごは他にないわ」

 

けれどもそのりんごは、

搬送途中で、道路に転がり落ちてしまった。

 

りんごは、一生懸命うったえた。

「私はこんなに赤くてつやつやで、

 炎よりも美しく・・・・・・」

 

近くを通る車も、人も動物もなかった。

1匹のアリがはしっこをかじりとって、

何も言わずに運んで行った。

 

「傷なんてつけないでちょうだい。

 私は立派な、特別なりんごなんだから」

 

他のアリもやってきて、

りんごは少しずつかじり取られた。

 

りんごはしくしくと泣いた。

 

 

子ザルが一匹通りがかってりんごを手に取った。

「ぼく、迷子なんだ。

お母さんがいないんだ。

おなかがすいた」

 

りんごは、

「私は特別なりんごなの。

うんと高価なりんごなのよ。

だから―」

と、続けようとしたが、

一息ついて、

「ぜひ食べて」と言った。

 

 

子ザルは「ありがとう」と言ってりんごを食べた。

むさぼりついて食べ終わると、明るい顔になった。

 

 

りんごは幸せだった。

 

トラックから落ちずに運ばれて行った、

他のどんなりんごたちよりも。

 

 

子ザルは、お母さんの声が聞こえて、

元気に返事をしながら森に帰って行った。